2017-04-26


    女西行 二条尼の旅路(巻四) はじめから読む     


       <⑲ 鎌倉の展望鶴岡八幡宮・続>

八幡の御神は、「他の氏の者よりは、源氏の者を特に守護しよう」とお誓い
になっているということである。 そして、わたしは因縁あってこそ、その八幡
の神に守られてしかるべき源氏の名門の家に生まれたのであった。 そうで
あったのにかかわらず、いったいどのような前世の報いでこのような有様に
なったのであろうか。

ああ、そうであったか。 父亡き後、石清水八幡宮へ参拝して「父が来世には
極楽に生まれ変わりますように」と、祈誓申した折り、御神より「今生のそなた
の果報に代えることで、叶えよう」というご託宣を伺ったのであった。

であるから、今のわたしの境遇をお恨み申しあげることはできないのだ。たと
え乞食をして歩くとしても、それを嘆いてはならないのだ。

また、小野小町も衣通姫(そとおりひめ)の流れを引く女性であるといっても、末
は葦(あし)で編んだ籠を肘にかけ、簑(みの)を腰に巻いて流浪するみじめな
有様であったというではないか。

だがしかし、わたしほど物思いをしたとは書き置いてはいないものを、なぜ我が
身は、などと思い続けながらも わたしはまず八幡のお社へ参詣することにした。







      鶴ヶ岡八幡宮

              <鎌倉・鶴岡八幡宮>



2017-04-22

小説 『 恋衣 』 -とはずがたりー

受講していただいている皆様へ


5月より開講の 

    講座 「天皇に愛された女の物語 - とはずがたり 鎌倉時代


いよいよ今年度には前編(巻1~3)を読み終えて、秋からの後半には
『とはずがたり』の紀行編である巻4へと読み進めていく予定です。


テキスト にしています 『とはずがたり』下 (講談社学術文庫) とは別に

今回 小説「とはずがたり」である  『恋衣(こいごろも)』 奥山景布子作 を
ご紹介したいと考え、学生センター別館 の書店 「ぶっくぎゃらりいDUO」に
置いていただくよう頼んできました。




    恋衣 文庫本です

学生割引価格でお求めいただけます。 今期登校の際にでもお立ち寄り
ください。




  獨協大学前駅

                 駅名 変わりました!


2017-04-19

 
    女西行 二条尼の旅路(巻四) はじめから読む

 
        <⑱ 鎌倉の展望鶴岡八幡宮

夜が明けると、江の島 というところから出て、鎌倉 へ入った。まず、
極楽寺 という寺に参詣してみる。僧の振る舞いは都と違いはないよ
うであった。

都が懐かしく感じられて、見学しながら行く。化粧坂(けわいざか)とい
う山を越えて 鎌倉 の方を眺めてみた。 だが、そこは都の東山から
京を見るのとは打って変わって、まるで階段になっているのかと思わ
れるように家々が重なっているのだった。

その様子は、あたかも袋の中に物を入れたようである。ごちゃごちゃ
と住んでいるあり様は何だかやりきれないような感じにさえ思われて、
心が留まるような気持はしない。


由比ヶ浜という所に出てみると、大きな鳥居がある。 ここから鶴岡
八幡宮若宮のお社を、遙か向こうにお見受けすることが出来たの
だった。



   寺風     鳥居





2017-04-15

 女西行 二条尼の旅路(巻四) はじめから読む

           <⑰ 江の島 岩屋に泊 3


うしろの山からであろうか、猿の声が聞こえてくるのも、哀切さに腸を
断つような思いがする。 心の内の物悲しさもたった今始まったことの
ように、後から後から思い続けられるのであった。

ひとり思い悩み、ひとり嘆くなみだも悲しみを乾かす機縁となるであろ
うかと、そのままひとり思いを巡らし、その場に佇むのであった。


都からここまでやって来たのに、『源氏物語』にある宇治の大君の「世
の憂きことは尋ね来にけり」という歌のとおり、つらい思いはこっそりと
跡をつけてやってきたのだなと悲しくて詠んだ歌、

 杉の庵 松の柱に しのすだれ 憂き世のなかを かけ離ればや
(杉で葺いた庵、松の木の柱に篠簾をかけるような家に住んで、憂くつ
らい世の中からかけ離れたものだ)


           

                すいれん
   


2017-04-12


       女西行 二条尼の旅路(巻四) はじめから読む

           <⑯ 江の島 岩屋に泊 2

人には言わぬ忍び泣きの涙で袂を濡らすばかりである。そこで、起きあがり
岩屋の外に出てみたところ、見えるのは大海原だろうか、それも雲の波なの
か、潮煙なのか、見分けもつかない。



しばらくそのままで居ると、動いていた夜の雲が水平線の彼方に消えてしまっ
たのであろう、ゆくべき方角を見失ったと思われた月がようやくその姿を現し
て、空に昇りはじめたのだった。

澄み渡った月をひとり眺めていると、「二千里の外の故人の心」といった詩句
のとおり、わたしも、本当に都から二千里も隔たったところまでやってきてしまっ
たのだなぁと思われた。





「十五夜の今しも出たばかりの月の光よ。この同じ月を、二千里もの遠くの
地にある友はどんな心で見ていることか、」

                 (『和漢朗詠集』上・十五夜 白楽天 による)


                       海辺



プロフィール

雅忠女

Author:雅忠女
正嘉2年(1258)生まれ。父、村上源氏・久我雅忠〔中院大納言・正二位〕 母、四条大納言隆親の娘。
二歳で母と死別、四歳より後深草天皇の宮廷で育つ。十四歳から、後深草院に上臈女房として出仕、併せて院の寵愛を受けることとなる。三十二歳の時、出家のうえ諸国行脚の旅に出る(先人西行に倣った旅と跋文に記す)。

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